【特養の施設内医療】「熱が出たらすぐ受診・搬送」を辞め、施設内でできる対応力を高める方法【第5講】

第5講では、これまで築いてきた医療連携の土台をさらに活かし、「施設内でできる医療・対応を増やし、不要な外来受診や入院を減らすための組織づくり」について解説します。

「熱が出たらすぐ受診」「急変したらすぐ搬送」という従来のワンパターンな対応を改め、特別養護老人ホーム(特養)の施設長や主任・リーダー看護師が主導して施設内の対応力を高めるための実務ポイントを見ていきましょう。

1. 「治療は病院」の意識を改め、「生活を支える医療」を施設で実践する

これまでの介護現場では、「医療や治療は病院の仕事であり、施設は生活の場だから何かあればすぐに病院へ送る」という固定観念が根強くありました。

しかし、制度上および配置医との事前の合意のもとで、特別養護老人ホームの施設内で対応できる医療や初期対応の範囲は想像以上にたくさんあります。 「誰かが教えてくれるわけではないから」と、何かある度にヒヤヒヤしながら安易な受診や搬送を繰り返すのではなく、配置医と経営者・看護師がしっかりと協議し、「施設内で対応できる範囲」を文書化してルール化することが、スタッフの安心感と組織の安定を生み出します。

2. 発熱時・急変時の「初期対応フロー」を明確に分ける

感染症(インフルエンザやコロナ等)の流行や発熱などのトラブルが起きたとき、現場がパニックにならないためには、「施設内でできること」と「受診・搬送すべきこと」の切り分け(フローの整備)が不可欠です。

  • バイタル・状態観察の徹底: 体温、血圧、酸素飽和度(SpO2)、意識レベルを客観的に評価する。
  • SBARを用いた報告と包括的指示の活用: 配置医への報告時は状況・背景・評価・提案(SBAR)の法則を使い、解熱剤の投与など包括的指示の範囲内であれば施設内で速やかに初期対応を行う。
  • 医療物品・酸素等の管理: 酸素濃度の小さなボンベだけでなく、緊急時に迅速に使用できるよう契約・配備の体制を整えておく。

こうしたフローを文章化し、職員全員で共有・訓練しておくことで、「いざという時に自分たちは施設内でここまで対応できる」という確固たる自信が生まれます。

3. 看護師の専門性を活かし、無駄な業務負担をなくす

「処置は病院でするもの」という思い込みから、本来なら施設内で完結できるケアのために看護師が頻繁な外来受診に付き添い、本来の業務が圧迫されているケースが見受けられます。

医療物品や薬剤、検査物品の棚卸し頻度や責任の所在を明確にし、介護職員ができる医療行為・できない医療行為の切り分けも行いながら、チーム全体でタスクを整理すること。 これにより、看護師が専門性を発揮して利用者の生活を支えられる環境が整い、慢性的な業務過多や人間関係の摩擦を防ぐことができます。

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▼ 特養の施設内医療体制を整え、選ばれる施設を作るために

記事執筆者プロフィール

眞鍋 哲子(まなべ てつこ) 株式会社ONMUSUBI 代表取締役 / 看護師・介護支援専門員 看護師経験33年、うち高齢者施設看護に23年間従事(社会福祉法人での看護介護統括、主任看護師等を歴任)。産業医科大学 産業保健学部 非常勤講師(老年看護学)として15年以上教鞭をとるほか、福岡県 “喀痰吸引等研修 講師養成課程” を務める。50床の特養にて年間延べ1,073日の入院を49日へ削減した実績をもとに、全国の高齢者施設に向けた医療・介護連携コンサルティング、研修、デジタル教育プログラム『施設医療アカデミー』を展開している。

【特養の協力医療機関と専門医連携】他科受診往診・入院・退院フローの再構築と看護サマリーの効率化【第4講】

前回の第3講では、医務室の核となる「配置医(嘱託医)との往診ルール」や、不要な救急搬送を防ぐ「包括的指示」の重要性について解説しました。

配置医との連携の土台ができたら、次はいよいよ「協力医療機関との連携体制の強化」と、迫る2027年4月の義務化への対応です。

特別養護老人ホーム(特養)の施設長や主任・リーダー看護師を対象に、施本記事では、協力医療機関や専門医(歯科・精神科等)との契約整理、入院時看護サマリーの効率化、そしてスムーズな入退院フローの再構築について解説します。

1. 2027年義務化へ向けて!専門医・協力医療機関との契約整理

特養の運営において、配置医の先生のほかに、協力病院(入院受け入れ)、歯科医師、精神科医、皮膚科医など、多くの医療専門職が関わっています。

しかし現場では、

  • 「どの専門医が、どの曜日にどのような頻度で来ているか」がスタッフ間で把握しきれていない
  • 外来受診の付き添いで看護師のマンパワーが常に奪われている

といった課題がよく見られます。 外来受診の負担を減らすために専門医の契約・連絡体制をもう一度見直すことやオンライン診療(ドクターメイト等)や施設内での往診への切り替えを検討することが、看護師の負担軽減とミスの防止に直結します。

ドクターメイトさん使っている方多いです★

https://doctormate.co.jp/service-2

2. 負担の大きい「入院時看護サマリー」をテンプレート化する

利用者が急変して病院に入院する際、または退院して施設に戻ってくる際、現場の看護師が最も頭を悩ませるのが「看護サマリー(情報提供書)の作成」です。

  • 入院のたびにゼロから書類を作っており、作成に時間がかかる
  • 薬剤情報や排泄状況、食事の摂取状況など、病院が本当に知りたい情報が漏れてしまう

この負担を解消するためには、サマリーの「テンプレート化(フォーマットの固定)」が不可欠です。 利用者の基本情報、家族の連絡先、直近のバイタルや生活機能だけでなく、薬の投与状況やアレルギー、直前までの食事・排泄の経過などを「誰が書いても同じクオリティで速やかに出せる状態」にしておくことで、病院の医療ソーシャルワーカーや窓口担当者との連携が驚くほどスムーズになります。

3. 相談員・ケアマネジャーと看護師の「役割分担」

入院や退院のカンファレンス、病院窓口とのやり取りは、看護師だけで抱え込んでいないでしょうか?

病院側の窓口や事務担当者との連絡調整、退院前カンファレンスの日程調整などは、生活相談員やケアマネジャーと役割を明確に切り分けることが重要です。 「看護師が同席できない場合は、相談員がどの点に注意して情報を持ち帰るか」といった社内ルール(タスク分担)をあらかじめ決めておくことで、多職種チームとして隙のない受け入れが可能になります。

4. 歯科・リハビリ・外部専門職との定期連携を活かす

医療連携は「医師・病院」だけではありません。 特に特養においては、誤嚥性肺炎を防ぐための歯科医師・歯科衛生士による口腔ケア(嚥下指導)や、リハビリスタッフとの定期的な情報共有が、利用者の生活機能を維持・向上させる上で極めて重要です。

これらを単発の依頼で終わらせず、定期的なスケジュールに組み込み、日々の介護ケアへフィードバックする仕組みを作ることが、施設の強み(質の高いケア)を生み出します。

【ご案内】2027年義務化に向けた体制づくりは『特養施設医療体制 業務改善コース』で

「協力医療機関との連携ルールをどう見直せばいいか分からない」 「看護サマリーや入退院のフローが属人化しており、スタッフの負担になっている」

2027年4月の制度義務化や実地指導に万全の備えをし、現場を疲弊させずに医療連携を強化するための具体的なツールとして、特別養護老人ホームの施設長や主任・リーダー看護師を対象にした『特養施設医療体制 業務改善コース(特別養護老人ホーム業務改善パック)』をご用意しています。

本コースでは、今回ご紹介した「看護サマリーの効率化」や「協力医療機関・専門医との連携ルール」を、現場のスタッフが動画と実践的なテンプレートで学べるパッケージとして提供しています。

また、自施設だけでは改善が進まない課題について、株式会社ONMUSUBIによる直接の伴走サポート(コンサルティング)も承っております。

次回(第5講)は、いよいよ最終回として、これまでの仕組みを現場に定着させ、スタッフの離職を防ぎながら選ばれる施設を作るための総まとめをお届けします。

▼ 2027年義務化に向けた協力医療機関との連携強化・サマリー見直しに

記事執筆者プロフィール

眞鍋 哲子(まなべ てつこ) 株式会社ONMUSUBI 代表取締役 / 看護師・介護支援専門員 看護師経験33年、うち高齢者施設看護に23年間従事(社会福祉法人での看護介護統括、主任看護師等を歴任)。産業医科大学 産業保健学部 非常勤講師(老年看護学)として15年以上教鞭をとるほか、福岡県「喀痰吸引等研修 講師養成課程」講師を務める。50床の特養にて年間延べ1,073日の入院を49日へ削減した実績をもとに、全国の高齢者施設に向けた医療・介護連携コンサルティング、研修、デジタル教育プログラム『施設医療アカデミー』を展開している。