【特養の配置医連携】往診日同席ルールと「包括的指示」で不要な救急搬送を防ぐ方法【第3講】

前回の第2講では、医療体制が進まない原因である「3つの見えない壁」と、自施設の組織的課題を見抜く「4層チェックリスト」について解説しました。

組織の現状が把握できたら、次はいよいよ「医務室の核となる配置医(嘱託医)・往診医との連携体制の構築」です。

施設医療アカデミーの内容より

1. 往診日の「事前報告リスト」と「同席ルール」が往診の質を変える

多くの特養で、配置医の先生が週1回や隔週で往診に来られた際、看護師はこのような状態になっていないでしょうか?

  • 医師が来て、聞かれた内容(状態)に答えられず対応に時間がかかる。
  • 必要な情報が十分に伝わらず、医師に必要な指示をうまく得られない。

配置医との連携の土台を作るには、「往診日の同席ルールと事前準備」を徹底することが不可欠です。

  • 事前報告リストの作成: 往診前に、今回診察すべき利用者のリスト、直近のバイタル変動、気になる症状を看護師が必ず事前に整理・準備する。
  • 往診時の同席と記録: 単なる付き添いではなく、看護師が現状の課題や介護現場からの情報を的確に伝え、医師の指示を正確にキャッチする場として往診を機能させる。

このスケジュールと動き方を施設全体で共有・徹底することが、監査対策としても、診療の質を高める上でも最初の基盤となります。

2. 電話指示のミスを防ぐ!「包括的指示」とルール化のポイント

急変時や発熱時、医師に電話で指示を仰ぐ際によくあるのが、「言った・言わない」のトラブルや、処方された薬の容量・日数の聞き間違い、記録の漏れといったヒヤリハットです。これを防ぐためには、以下の仕組みを文書化(ルール化)する必要があります。

包括的指示(プロトコル)の事前合意

解熱剤や下剤、簡単な処置などについて、「この利用者の状態であれば、この範囲の薬剤を事前に使ってよい」という包括的な指示を配置医と事前に取り決め、文書で合意しておくことです。毎回細かい電話をしなくても施設内で迅速な初期対応ができるようになり、夜間の看護師の不安や負担も劇的に軽減されます。

電話指示受領の記録とサイン手順

医師から電話やメール、チャットで指示を受けた際の手順(報告フォーマット)を固定化し、後日必ず医師の確認・サインをもらう導線をルール化します。

3. 夜間・休日のオンコール体制と「救急搬送の判断基準」

「夜間に熱が出た」「転倒した」という時、現場の夜勤帯スタッフやオンコール対応の看護師が最も悩むのが、「今すぐ救急車を呼ぶべきか、様子を見るべきか」の判断です。

  • オンコール連絡先の最新化: 夜間・休日に連絡が取れる医師や協力医療機関の担当者リストを常に最新の状態に保つ。
  • 搬送判断基準の事前共有: 「こういう状態であれば救急搬送」「ここまでなら施設内で対応して翌朝配置医に相談」という判断基準を配置医・協力医療機関とあらかじめすり合わせておく。

この基準が曖昧なままだと、夜間の責任を恐れてすぐに救急車を呼ぶことになります。現在、軽症搬送が多く緊急搬送が問題になっています。何事も準備や日頃の対応が大切!!

4. DNAR・看取り方針の共有と、ご家族との信頼関係

配置医との連携において、避けて通れないのが「DNAR(心肺蘇生拒否)および看取り方針の共有」です。

入所時にご本人・ご家族の意向(人生会議・ACP)を確認し、配置医を交えて方針を共有しておくことが極めて重要です。 「入所後に家族と医師の意見が食い違ってしまい、いざという時に医師が指示を出せない」という事態を防ぐためにも、早い段階で共通認識を持てる体制を整えましょう。

しかし、多くの施設では、心理的ハードルが高く入所時に命のことを聞き取ることが出来ていないことがあります。高齢であり疾患を多数持っているご利用者はいつ急変するかわかりません。その時に準備ができておらず後悔することがないようルールを決めておきましょう。

【ご案内】特養の医療体制を根本から整える『特養施設医療体制 業務改善コース』

「配置医の先生との往診ルールをどう作ればいいか分からない」 「包括的指示の文書化や、夜間の判断基準をスタッフに落とし込む時間がない」

そのための具体的なツールとプログラムとして、特別養護老人ホームの施設長や主任・リーダー看護師を対象にした『特養施設医療体制 業務改善コース(特別養護老人ホーム業務改善パック)』をご用意しています。

本コースでは、今回ご紹介した「配置医連携の実務ポイント」や「各種ルール化のテンプレート」を、現場のスタッフが動画で学べるパッケージとして提供しています。 経営者が丸抱えで悩むのではなく、仕組み化されたプログラムを活用することで、現場が自ら動き出す看護体制を作ることができます。

また、実際に直接サポート伴走することもONMUSUBIには可能です。

次回(第4講)は、2027年の義務化に向けて最も重要な「協力医療機関との連携強化と、看護サマリー・入退院フローの再構築」について詳しく解説します。

▼ 特養の配置医連携を強化し、不要な入院と夜間の混乱を防ぐために

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記事執筆者プロフィール

眞鍋 哲子(まなべ てつこ) 株式会社ONMUSUBI 代表取締役 / 看護師・介護支援専門員 看護師経験33年、うち高齢者施設看護に23年間従事(社会福祉法人での看護介護統括、主任看護師等を歴任)。産業医科大学 産業保健学部 非常勤講師(老年看護学)として15年以上教鞭をとるほか、福岡県「喀痰吸引等研修 講師養成課程」講師を務める。50床の特養にて年間延べ1,073日の入院を49日へ削減した実績をもとに、全国の高齢者施設に向けた医療・介護連携コンサルティング、研修、デジタル教育プログラム『施設医療アカデミー』を展開している。

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