施設看護は、病院看護の延長ではない

―23年間、施設で看護をしてきた私が今伝えたいこと―

こんにちは!眞鍋です★  久しぶりに「異端児ナースブログ」を書きます。

ブログをお休みしている間も、私は高齢者施設や病院、訪問看護など、さまざまな現場に関わってきました。

株式会社ONMUSUBIを立ち上げ、今は一つの施設の中だけではなく、外から多くの現場を見るようになりました。

そこで、改めて強く感じていることがあります。

それは、

施設看護は、病院看護の小さな縮小版ではない

ということです。

施設に来た途端、看護師に多くのことが任される

病院は、病気を治療する場所です。

医師がいて、検査ができ、治療方針が決まり、看護師はその方針に沿って看護を行います。

一方、高齢者施設は、その人が暮らす場所です。

医師が常にいるとは限りません。

看護師の人数も少なく、夜間は看護師が不在の施設もあります。

そのような環境の中で、施設看護師には、

  • 日々の健康管理
  • 状態変化の判断
  • 医師への報告
  • 外来受診や救急搬送の調整
  • 医療処置
  • 介護職からの相談対応
  • ご家族への説明
  • 看取りや急変時の対応

など、多くの役割が任されます。

病院では医師や複数の看護師と相談できていたのに、施設に来た途端、一人で判断を求められる。

それなのに、施設看護について学ぶ場所は、まだ十分にありません。

病院で身につけた知識と経験だけを頼りに、手探りで働いている看護師も少なくないのではないでしょうか。

私も、施設看護が分かっていませんでした

私が高齢者施設で働き始めた頃も、施設での健康管理や看護師としての動き方を、誰かから体系的に教えてもらったわけではありません。

看護の責任者をしながら、看護と介護の連携も考え、とにかく必死でした。

私の中には、いつも「なぜだろう」がありました。

なぜ、この方は誤嚥性肺炎を繰り返すのだろう。

なぜ、尿路感染症になるのだろう。

なぜ、便秘や脱水を繰り返すのだろう。

なぜ、受診や救急搬送がこれほど多いのだろう。

なぜ、最期まで暮らした施設で看取ることができないのだろう。

検査や薬だけでは、答えが出ないこともたくさんありました。

そこで、利用者さんの食事姿勢、食べ方、水分量、排泄、睡眠、活動、皮膚の状態など、毎日の暮らしを見直していきました。

すると、病気になってから対応するだけでなく、日々の介護や看護によって病気になるリスクを減らせることが見えてきました。

食事の姿勢を整える。

口の中を清潔にする。

水分摂取や排泄の状況を確認する。

寝たきりにせず、身体を動かす。

小さな「いつもと違う」に早く気づく。

その一つひとつが、誤嚥性肺炎や尿路感染症、脱水、褥瘡などの予防につながります。

これが、私が現場で学んできた生活の中の看護です。

施設看護師だけが頑張っても、医療体制は整わない

ただし、看護師が知識や技術を身につけるだけでは、施設の医療体制は整いません。

急変したとき、誰が何を確認するのか。

どの段階で看護師へ連絡するのか。

看護師は、何をもとに医師へ報告するのか。

施設内で対応できる医療行為は、どこまでなのか。

受診や救急搬送の基準は決まっているのか。

本人や家族と、ACPや看取りについて話し合えているのか。

配置医や協力医療機関とは、どのような連携をするのか。

これらが曖昧なままでは、看護師一人に判断と責任が集中してしまいます。

「経験のある看護師がいるから大丈夫」

「何かあったら看護師に聞けばよい」

それでは、組織としての体制とは言えません。

必要なのは、誰か一人の頑張りではなく、医師、看護師、介護職、相談員、ケアマネジャー、リハビリ職、栄養職、薬剤師、そして経営者が、それぞれの役割を理解して動ける仕組みです。

業務改善やICTも、利用者さんのためにある

今、多くの施設で人手不足が問題になっています。

だからこそ、これまで当たり前に続けてきた業務を、一度立ち止まって見直す必要があります。

同じ内容を何度も記録していないか。

必要以上に長い申し送りをしていないか。

物を探すことに時間を使っていないか。

紙でなければならないと思い込んでいないか。

一部の職員しか分からない仕事になっていないか。

ICTを導入すること自体が目的ではありません。

無理・無駄・ムラを減らし、職員が利用者さんと関わる時間や、学ぶ時間を取り戻す。

そのためにICTを使うのです。

業務改善と施設の医療体制づくりは、別々の話ではありません。

職員に余裕がなければ、小さな変化に気づくことも、丁寧に情報を共有することも難しくなります。

働き続けられる職場をつくることは、利用者さんの安全とケアの質を守ることにつながります。

なぜ「異端児ナース」なのか

「異端児ナース」という名前だけを見ると、変わった看護師だと思われるかもしれません。

私が考える異端児とは、ただ人と違うことをする人ではありません。

現場で長く続いている「当たり前」に疑問を持ち、

「なぜ、この方法なのだろう」

「本当に利用者さんのためになっているのだろうか」

「もっとよい方法があるのではないか」

と考え、必要であれば仕組みそのものを変えていく人です。

病院と施設の間にある壁。

看護と介護の間にある壁。

経営と現場の間にある壁。

制度と実際の暮らしの間にある壁。

私はこれからも、その壁を越えて、人と人、医療と介護、制度と現場を結んでいきたいと思っています。

このブログで、これから伝えていきたいこと

このブログでは、これから、

  • 施設看護師の役割と専門性
  • 病院看護と施設看護の違い
  • 生活の中で病気を予防する視点
  • 看護と介護の役割分担と連携
  • 配置医・協力医療機関との連携
  • 救急搬送や外来受診を減らす体制づくり
  • ACPと看取り
  • 業務改善とICTの定着
  • 施設で働く職員が学び続けられる仕組み

などを、制度の説明だけではなく、現場で実際に使える形で発信していきます。

施設によって、抱えている課題も、職員配置も、連携できる医療機関も違います。

誰かの成功例を、そのまま持ってくるだけではうまくいきません。

まずは、自分たちの施設の現状を知ること。

できていることと、できていないことを見える化すること。

そして、一度にすべてを変えようとせず、足元にある一つから動かしていくこと。

その積み重ねが、利用者さんが安心して暮らせる施設をつくり、職員が安心して働ける環境につながると考えています。

23年間、施設看護の現場で悩み、考え、実践してきたこと。

そして今、さまざまな施設に関わる中で見えてきたこと。

きれいな話だけではなく、現場の難しさや失敗も含めて、もう一度この「異端児ナースブログ」から伝えていきます。

必要な人に、必要な情報が届きますように。

株式会社ONMUSUBI
代表 眞鍋哲子